あらすじ
善良な弁護士白石健介が殺害された。容疑者として捜査線に浮上したのは白石に接触していた倉木達郎という男であった。達郎の自供により事件は解決のはずだった。
しかし、父親の行動言動に不信感を抱いた「加害者の息子」と「被害者の娘」。昼と夜、立場は違えど真相を知りたいという同じ思いを抱いた2人は協力しながら真相に迫っていく。しかし、それは2人にとってあまりに残酷な受け入れ難い、出来ることなら知りたくなかった真相。
達郎の「白石さんを殺したのは私です。そして灰谷昭造を刺し殺したのも私です」というセリフがこの小説の始まりです。2017年東京、1984年愛知、2つの事件が交錯する長編ミステリー。
東岡崎駅前金融業者殺害事件
30年前に年配をターゲットとした詐欺を繰り返していた灰谷昭造が殺害された事件。遺体の第一発見者は2人おり、達郎がその1人であった。詐欺に遭い金銭トラブルが原因で揉めていた福間淳二が容疑者として拘束され留置書で首を吊ったことで事件は終わりを迎えた。
福間淳二の家族であった洋子(母)と織恵(娘)は旧姓である浅羽として殺人者の遺族として悲惨な人生を歩むこととなる。
冤罪で大黒柱を失った浅羽母娘
加害者遺族として世間から罵られながらも懸命に生きてきた洋子と織恵は飲食店「あすなろ」を2人で切り盛りし、繁盛させてきた。
「あすなろ」には多くの常連で賑わい、倉木達郎もその常連の一人であった。冤罪で苦しめた洋子と織恵に詫びる気持ちで店に通い残された唯一の罪滅ぼしを考える。
倉木達郎の自供
灰谷と自動車事故を起こしてしまった倉木は「灰谷に法外的な多額の治療費を請求され頭に血が上り刺し殺した」と自供。そして間もなくして灰谷と金銭トラブルが原因で揉めていた福間淳二が逮捕され自殺したことで事件は一段落した。
しかし、罪のない男の人生と、自殺した福間に残された家族の人生を奪ってしまった罪悪感を抱えながら生きていくことに疲れ、罪滅ぼしのために自身の遺産を浅羽洋子に譲渡することを思い立ち、白石弁護士に相談したが、「死んでからではなく、生きているうちに罪を償うべきだ」と諭され、30年前の事件が明るみに出ることを恐れ、殺害に及んだ。
加害者遺族となった倉木和真
弁護士伝いで父親の自供を聞いた和真だが、過去の罪を白石弁護士に相談したところで「生きているうちに罪を償うべきだ」と催促されることは予想出来ただろうと父親の行動に疑問を抱く。
それに頭に血が上り包丁で刺し殺すような人間ではないと息子である自分が一番わかっていた。事件の真相は探るため和真は大胆な行動に出る。
被害者遺族となった美令
白石健介の娘美令は健介の行動に疑問を抱いていた。
健介が倉木に対して、「過去の罪を自白するべきだ」と責め立てるようなことは絶対しない、「過去の過ちを告白できないのが人間という生き物だ」と理解しているはずなのに、そのような行動をとった父親が不思議でならなかった。
被告人の倉木達郎が何かの為に、誰かを庇う為に、嘘をついているのではないかと、真実を突き詰めるため動き出す。
加害者遺族の息子と被害者遺族の娘
和真は美令に「倉木達郎の息子の和真です」と打ち明ける。
父が人を殺すような人間ではないと被害者遺族の心を踏み躙るような発言をしてしまった和真だったが、美令の口から出た言葉は思いもよらぬ返答であった。
「あたしも、あなたのお父さんは嘘をついていると思います。うちの父はあんな人間ではありません」
健介が過去の罪を自白するべきだと責め立てるような人間ではないと確信しているからこそ出た本音。この言葉をきっかけに、加害者側と被害者側、立場は違えど「本当のことを知りたい」と目指す先は同じになった2人。
捜査を進める2人
和真は実家の引越し日が東岡崎駅前金融業者殺害事件の日から4年後であったことを突き止めた。時効を待つ人間であれば殺人をした日を忘れるはずないが、達朗は「仕事がない日を選んだだけ」と供述。
健介は野球観戦の2時間前に歯医者に行っており、医者からは「アルコールを控えるように」と釘を刺されていたことを知った美令。達郎の供述によるとビールを飲んでいたはずの健介だが、約束を破るようなことは絶対しないと美令は嘘の供述だと確信する。
東岡崎駅前金融業者殺害事件2人目の第一発見者
灰谷の会社で電話番として働いていた灰谷の甥にあたる坂野という男が達郎と一緒に灰谷の遺体を発見した。坂野の話によると、「金銭トラブルで揉めていた福間淳二は灰谷の事務所で灰谷を待っており、坂野は事務所にいたが気まずくなり灰谷を探しに行ったが見つからず、事務所前で達郎と出くわし灰谷の遺体を一緒に発見した」というものだ。
達郎の嘘の供述
達郎は遺産相続について白石弁護士に相談したと供述していたが、事件が起こる以前に名古屋に弁護士事務所を構える天野という男に相談していた。
また、美玲が見つけた健介のアルバム写真に映る中日ドラゴンズの帽子を被っている健介は10歳に満たない少年であった。何故達郎は健介が中日ドラゴンズのファンになった本当の経緯を隠すのか。健介にとっての「愛知県」とはどういう場所なのか。
健介の過去
健介は大学時代頻繁に「愛知県」に行っていた。交通事故で亡くした親父の代わりに様子を見に行かなければいけない父方の祖母、新美ヒデに会いに。
購入リンク
倉木達郎と白石健介の出会いのいつなのか。2つの事件がどの様に関係しているのか。健介を殺害した真犯人は誰なのか。
東野圭吾氏の最高傑作といっても過言ではありません。数多のミステリーを生み出してき天才が今後の目標は「白鳥とコウモリを超える作品を生み出すこと」と話しています。
コメント