昔観た映画の原作シリーズ「カラスの親指」

ミステリー

ペテン師の出会い

元鍵屋の入川鉄巳は鍵穴に接着剤を入れ、事前に投函していた「鍵の交換修理即日対応」というチラシから電話を促し、鍵を修理することで、お金を騙し取る詐欺をおこなっていた。

同様の手口で武沢竹夫という男を騙そうと考えていた入川であったが、武沢はアパートの外で待ち合わせしていたにも関わらず、入川が下を向いたまま階段の踊り場から4番目である自宅の205号室前で止まった事から事前に来たことがあると推測し白状させた。これがペテン師2人の出会いだった。

2人の共通点

武沢と入川2人には「妻を亡くしている」という共通点があった。

武沢は12年前に癌で妻の雪絵をなくし、7年前に一人娘の沙代を亡くした。そして入川は妻が覚醒剤性行為による借金を返済しきれず首を吊った。

武沢の過去

武沢は妻が亡くなり、ストレス発散のため同僚と一緒に賭博をした。同僚が賭博店からお金を借りることになり、同僚の身元保証人としてサインしたが、同僚が飛んだ。借金を肩代わりすることになった武沢はヤミ金に手を出し、返済の目処がつかず、ヤミ金組織で働くことになった。

その後、ワタヌキ(取り立て屋)を行い、ある1人の女を自殺させてしまった。

これを機に組織を摘発する事を決心し、事務所から資料を盗み、無事組織を摘発することに成功した。しかし、警察の手が届かなかった組織の人間に、自宅を放火され、娘を火事で亡くしたのだ。娘を亡くしたことをきっかけに、武沢は正義を捨て、悪党で生きていくと決め、ペテンを生業としたのであった。

入川の過去

入川は鍵屋として働いていたが中々業績が上がらず借金することとなった。それでもなお、夫婦2人で協力しながら働くことに生きがいを感じていた。

しかし、入川の妻は鉄巳が外出している際に、他の男と覚醒剤性行為にハマり、抜け出せなくなり覚醒剤を買う為、ヤミ金に手を出し、借金が膨れ上がった。そしてワタヌキに返済を催促され、首を吊ったのであった。

組織を違えど、入川の妻は武沢が働いていた同業者の債務整理屋に殺されたのだ。

債務整理屋の復習①

武沢と入川2人の寝床であったアパートが火事に遭った。

後に大家から電話が入り、武沢宅のポストの中へ灯油を注いでいた怪しい男を警察が探していると。そして、ヒグチという男が武沢の居場所を教えろと恐喝してきたと。

母親をなくした女

新しい寝所を探す為不動産屋を回っていた2人は、ある1人の女と出会う。

通りすがりの男の背広にクレープをつけ、あわてて汚れを落としている時、内ポケットから財布をぬいた。日頃からスリをしていると一目で分かる程の手際だった。

シングルマザーの家系で育ち、その母親を自殺で亡くし、残された子供。それが河合まひろであった。母親を亡くしてからスリで生計を立てている程、普通ではない人生を歩んでいた。家賃を払う金が無く途方に暮れている赤の他人である、まひろに「うちに来ればいい」と手を差し伸べる武沢。こうしてペテン師は3人となったのだ。

5人となったペテン師

武沢がワタヌキとして自殺に追いやった女が、まひろの母親だった。武沢が赤の他人であるまひろに手を差し伸べた背景には贖罪が存在していた。

まひろには姉がいた。やひろという名前の歳の離れたよく似た姉がいた。武沢は残された子供が2人ということも知っており、やひろも連れてくるだろうと考えていたが、まひろは1人で来た。

後に、やひろも武沢と入川の住居にやってきた。何故か小肥りの彼氏寛太郎を連れて。こうしてペテン師は5人となったのだ。

債務整理屋の復讐②

自宅の周りを散策している怪しげな男を武沢は目撃した。

その後、庭を放火され、鎮火を見届けセダンに乗っていた男は武沢に「火事が多いな武沢さん」と発した。その男を入川は知っており、以前入川と妻を騙した、債務整理屋であった。

その債務整理屋が何故か武沢の名前を知っていた。何故か住居を知っていた。

ペテン師の復讐①

武沢と入川は、まひろとやひろ、寛太郎にも事情を話すことした。

「武沢と入川は以前債務整理屋に騙され、武沢が組織の機密情報を警察にリークしたことで組織を解散させた。」それに対し、まひろとやひろは「それって7年前じゃないの?」と母親が自殺した時警察から、組織は解散したと伝えられていたのだ。

つまり、やひろとまひろからすれば、武沢、入川、まひろ、やひろの4人は同じ組織に苦しめられ、大切な人を失い、恨みの対象が同じであるのだ。

しかし、武沢は被害者であると同時に加害者でもある。こうしてペテン師達は、復讐を決意したのだ。

ペテン師の復讐②

債務整理屋を尾行し、住居を突き止め、計画に移る。

プリペイド携帯を購入し、探偵事務所に頼み、盗聴器を仕込んだ。そして彼らの家のポストに「プリペイド携帯1台1000円」というチラシを投函し、連絡を待ち購入させ、事務所内の会話や電話の録音に成功した。

一つ下の階の空き部屋を借り、奴らの会話を録音し、ヤミ金の振込先口座を特定した。こうして違法金銭の振込先口座を特定していると奴らのポストに書類を投函し、現金を引き出させることに成功したのだ。

そして、その金を奪い取るのが作戦だ。ヒグチや武沢の顔を見たことがある人間が居ない隙に、彼らの部屋を訪れ、盗聴器を発見するプロだと偽り、乗り込んだ。現金を隠している金庫に盗聴器の中継機が隠されていると伝え、金庫の中を開けさせ、5人の見事な連携、名演技により金を騙し取ることに成功した。

人生最大のペテンを仕掛け成功し意気揚々とマンションを出ようとしたその時、宿敵のヒグチが立っていた。

ペテン師の解散

ヒグチは若返り、武沢の知っている顔ではなかった。武沢が恨んでいたヒグチは既に亡くなっており、弟が兄の遺言を達成するため、武沢を遊んでいたのだ。作戦は失敗に終わり、金を奪いきれず殺されることを覚悟していた5人だったが、何故か殺されることはなかった。ヒグチは”遊び”と強調し、帰っていいと言った。

しかし、帰り際にヒグチは「七年前にお前が女を自殺させた時、流石の兄貴も冷や汗ものだったって言ってたぞ。」と発した。武沢は安堵と焦り、何が何だか分からないままマンションを後にした。

こうしてペテン師は解散したのだ。

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何故ヒグチは兄の遺言である恨みの対象である、武沢ら5人を殺害せず見逃したのか。

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